奈良県東吉野村にある交流拠点施設「オフィスキャンプ東吉野」を拠点に、インドネシアから3名のデザイナーと奥大和地域在住の地元クリエイター3名が滞在。前半3日間は奥大和地域の食品関係の事業者のもとで過ごし、商品や会社、地域のことを深く理解した上で、デザインを制作するプログラムです。「DESIGN CAMP@奥大和」は、まだ見ぬ未来への扉をひらくようなコミュニケーションデザインを制作・提案することを目的としています。
開催日時:2017年1月26日(木)~2月3日(金)
DAY | PROGRAM |
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DAY1 | オリエンテーション |
DAY2 | 事業者研修 / ホームステイ ① |
DAY3 | 事業者研修 / ホームステイ ② |
DAY4 | 事業者研修 / ホームステイ ③ |
DAY5 | デザインワーク ① |
DAY6 | デザインワーク ② |
DAY7 | デザインワーク ③ |
DAY8 | デザイン成果発表会 |
DAY9 | 視察 |
参加クリエイター
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Zinnia Nizar(Indonesia)
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Wulan Pusponegoro(Indonesia)
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Rege Indrastudianto(Indonesia)
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坂本 大祐Daisuke Sakamoto
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廣瀬 佑子Yuko Hirose
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赤司 研介Kensuke Akashi
受け入れ事業者
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美吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)
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株式会社テラス(奈良県宇陀市)
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健一自然農園(奈良県山添村)
美吉野醸造では、朝6時30分から蔵人さんと同じ酒作りの作業に加えていただきました。健一自然農園ではお茶の木の伐採と運搬などの外作業。普段は打ち合わせとPCの前での作業ばかりのデザイナーたちが、慣れないながらも必死に身体を動かすことで、「全身で商品のことを理解できた気がする」という声もありました。
こうしてたっぷりと時間をかけてインプットを行ったあとは、オフィスキャンプ東吉野に滞在しながらデザイン制作を開始。「日本国内でより多くの人に届けるコミュニケーションデザイン」&「日本からインドネシアに伝えるためのコミュニケーションデザイン」をテーマに、キャッチコピー、商品/企業/ブランド等のロゴマーク、商品パッケージデザイン、WEBサイト、パンフレットなど、事業者によって最適だと思われる手段を選択して実際に制作していきます。
また、日本人デザイナーとインドネシア人デザイナーのペアで1つの提案を行うということで、はじめは不安を感じていたようだが、共同生活によって次第にその距離が縮まり、言語の壁を超えてのやりとりが続いていたのが印象的でした。
絵や写真などを見せ合いながら、どのような方向性で薦めていくかをすりあわせていき、スケジュールと役割分担を確認したあとは互いに制作を進めていきます。
デザイナーの中には最終日の朝4時まで作業をしていたデザイナーもおり、事業者の未来に想いを馳せながら、心を込めてデザイン制作に打ち込んでいました。
そして2月3日には、事業者に向けた発表会が奈良市内にあるレストラン「coto coto」にて行われました。(※こちらは関係者のみの招待制としていました)
製造現場での体験やホームステイなどを経て、家族や社員の一員のように、事業者のことを深く理解したうえでの愛のあるデザイン提案が繰り広げられます。提案を受けた事業者は「自分たちでは思いつかなかったような新しい観点からのデザイン提案に驚いた」という声や、「ぜひこれを具体的に進めていきたい」という声も上がりました。そして、なかには感極まって涙する事業者も・・。
プログラムを通してとくに印象的だったのは、言語も考え方も異なるインドネシアから来たデザイナーたちが、各事業者の強みや魅力をすっと理解していったこと。事業者たちの説明のうまさや、ホスピタリティの高さ、そして日本人デザイナーの存在はもちろんだが、外からの視点が入ることでより広い観点で本当の意味での価値があぶり出されていく気がした。そこには海を越えても伝わる普遍的な価値が見えてきます。
報告会の後には、さっそくこれからどんな風に進めていくことができるか、というやりとりがはじまっていた。デザイン提案で終わりではなく、このつながりからなにかが生まれていくような予感を感じさせる、これからの展開も楽しみなプログラム。これからの展開もどうかお楽しみにしていてください。
美吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)
- 美吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)
- 千本桜で知られる奈良吉野で、農と共に歩む酒造りの第一歩として、米づくりからの「顔の見える酒造り」をモットーに、手造りによる丹精込めた酒造りを行っている。代表銘柄は「花巴」。
http://www.hanatomoe.com
- Zinnia Nizar
- 1995年にシアトル美術学校、1998年にSchool of Visual Arts New Yorkを卒業後、各種雑誌のクリエイティブディレクターを担当。 2001年、2人の友人とともに映画ポスター&CDジャケットを制作する「Akal Design」を設立。その後インドネシア最大の出版会社である「Kom -Pas-Gramedia」にて多くのノンフィクションやアートブックを手がけた。 2008年 には、妹と共に「Ampersand Studio」を設立し、主に出版関係のデザインを制作している。IDS(国際デザインスクール)とIKJ(ジャカルタ芸術学校)でグラフィックデザインの強靭をとるほか、2009年よりADGI (The Indonesian Associationof Graphic Designers)に携わるようになり、2014-2016年のADGIの会長をつとめる。
- 坂本 大祐 / Daisuke Sakamoto
- 1975年、大阪府生まれ。和歌山県でデザイナーとして活動をスタート。身体を壊したのを機に、2006年、両親が移住していた奈良県・東吉野村へと拠点を移す。移住後は県外の仕事を受けながら、今までの働き方や生活を見直し、自分にとって居心地のいい新たなライフスタイルを模索。ある出会いをきっかけに、奈良県内の仕事が増え,商品やプロジェクトなどの企画立案からディレクションまで手がけるデザイナーとしてさまざまな案件に携わる。2015年3月にオープンした「OFFICECAMP HIGASHIYOSHINO」設立時にも企画からデザイン、運営までを担当。村と外をつなぐパイプ役として、東吉野村を拠点に活動中。
株式会社テラス(奈良県宇陀市)
- 株式会社テラス(奈良県宇陀市)
- 宇陀市にて、健康なまちづくりに貢献したい、という思いから薬草、健康野菜の栽培、加工事業に取り組む。現在は大和当帰(トウキ)や甘茶など、薬草の栽培・加工・販売など六次産業化を展開している。
http://www.terrasse.co.jp
- Wulan Pusponegoro
- ジャカルタ在住のグラフィックデザイナー。2001年にジャカルタのTrisakti大学を卒業後、広告代理店Asatsu-DKに勤務したのち、出版社「Media Satu Publishing」のクリエイティブディレクターとして、インターナショナルマガジンや、そごう百貨店などの大手企業向け雑誌の編集ディレクターをつとめる。2009年には、インドネシア初の地下鉄「MRTジャカルタ」の全国ロゴコンペを受賞。 2014年には、オランダのティルブルグ大学で社会起業家についてのMBAを取得。その後は、持続可能な農業と直接取引によって農家の所得向上を目的として小規模珈琲焙煎所を立ち上げ。現在は、ジャカルタを拠点とするデザインスタジオ「Mitragrafia」のビジネス開発/クリエイティブディレクター。
- 廣瀬 佑子 / Yuko Hirose
- 大阪府生まれ育ちの、グラフィックデザイナー。広告制作会社にて経験を積んだ後、吉野町へ移住。住みながら、奈良県の魅力を伝えるデザイナーをしています。お節介なオカンのごとく依頼者にひたすら寄り添い、どんな表現が依頼者にとってベストかを考える手法でデザインをしています。デザイナーが本業ですが衣・食・住をできるだけ自活する野生児でもあり、自分が携わった商品を料理として出す「家庭料理オカン」も実験営業中。世界にとって自然で、正しいものをどう人に伝えるか、また興味のあることを楽しく、仕事にし、生きていくかを模索中。
健一自然農園(奈良県山添村)
- 健一自然農園(奈良県山添村)
- 奈良県北東部に位置する大和高原で1200年前と同じ方法で、生命を大切にし、純粋に育まれた、「安心して楽しめる」自然栽培(※一切農薬・肥料を用いない栽培法)の大和茶を栽培している。
https://kencha.jp
- Rege Indrastudianto
- ジャカルタ在住のグラフィックデザイナー。2005年にJakarta Arts Instituteの芸術学部でビジュアル・コミュニケーション・デザイン学科を卒業。「Visious Studio」とデザインブログ「grafismasakini.com」の創設者。Visious Studioを創設するまではOgilvy & Matherや Mullen Lowe Indonesiaなどのインドネシア企業及び多国籍企業でグラフィックデザイナーとして働いていた。2015年にはADG(インドネシアグラフィックデザイナー協会/The Indonesian Association of Graphic Designers)ジャカルタ支部長に選出。2017年にADGIの会長に就任。
- 赤司 研介 / Kensuke Akashi
- SlowCulture代表/編集者・ライター。1981年、熊本県生まれ。東京の広告会社でライターとしてのキャリアを積み、2012年に奈良県東部の農村地へ住まいを移す。2児の父。移住後は大阪の印刷会社CSR室に勤務し、さまざまな地域プロジェクトに携わる。2016年に独立。「自然としての健やかな選択」をする人が増えていくための編集・執筆に取り組んでいる。編集ユニット「treetree」共同代表。奈良を日英バイリンガルで編集するフリーペーパー「naranara」編集長。NPO法人「ミラツク」研究員。Webマガジン「greenz.jp」や「京都市ソーシャルイノベーション研究所 SILK」のエディター・ライターとしても活動中。茶を通じて「人も自然として在る未来」の実現を目指す伊川健一の言語化およびクリエイティブパートナー。